宅配ドライバーのFuku2(フクツ)と申します。
車がぬかるみにはまり、脱出した時の話を紹介します。
私の場合は、自分たちの力で解決できたパターンでした。
しかし、ビジネスパートナーのMi0(ミオ)は、自己解決できないパターンだったので、自己解決できた時とできなかった時の2つにわけて、紹介していきます。
車がぬかるみにはまり脱出【自己解決編】
「格好良いところを見せよう」そう思ったのが、悲劇の始まりだった
蝉の声がうるさい、夏のある日。
前日の大雨が嘘のように止み、サンサンと降り注ぐ太陽の日差しが眩しかったのを覚えている。
その日は、ビジネスパートナーのMi0(ミオ)に、私が請け負っている宅配の仕事を教える日だった。
彼が横に乗り、私が運転する。
仕事の基本を教えるのに、この方法が一番やりやすい。
普段、一人で宅配しているのもあり、いつもと違う状況に気分が高揚していた。
(格好良いところを見せよう)
口には出さず、心の中で一言つぶやく。
スタイリッシュな動きで素早く荷物を荷台に積み込む。
それを見ていたMi0(ミオ)に、「慣れればこのぐらい誰にでもできるようになる」と仕事を取ってから2週間しか経っていないにもかかわらず、先輩風を吹かせた。
Mi0は、私のあまりの格好良さに圧倒されたのか、黙り込む。
そんなMi0に気分を良くした私は、スタイリッシュに運転席の扉を開き、スタイリッシュに運転席に乗り込むと、車の鍵がついたキーリングを人差し指でくるりと一周させた後、スタイリッシュにエンジンのキーを回した。
問題がない時こそ、一瞬の油断で問題は起こる
仕事は順調だった。
17時までに、仕事を終わらせれば良い契約だが、15時の時点でほぼ終わっていた。
後は、営業所の近くにある一軒家に配達して今日の業務は終了。
素早く仕事を終わらせることで、Mi0に私の優秀さを見せつけようと、草で覆われていた空き地に、バックで車を突っ込む。
わざわざ一回りせずとも、こういった空き地をうまく活用することで、方向転換し、最短ルートで目的地へ向かうことができるからだ。
「これがプロの仕事のやり方」
そう言って、さらにバックで空き地の奥へ入っていくと、ズボッ! という間の抜けた音が響き渡った。
「あ?」
アニメぐらいでしか聞かないような間抜けな音に、異変を察知した私は、すぐに“リターン”から“ドライブ”へとシフトレバーを切り替え、アクセルを強く踏み込む。
「あ、あれ? 動かねえっ!」
ウオーッ! アクセルを踏めども踏めども、車からおっさんのうめき声みたいな音しか鳴らず、まったくもって動かない。
――私は、ぬかるみにはまったのだ。
ぬかるみにはまった時こそ冷静さが求められる
私は焦った。
焦りすぎて、「友達の作り方」をgoogleで検索し始める。
どうにもならない状況に、精神が異常をきたし、脳の回転が著しく下がった結果だと思う。
そんな私をMi0(ミオ)は一瞥すると、すまし顔で車から降りた。
そして、車の後部に手を添える。
「Fuku2(フクツ)さん。1・2の3で押すんで、アクセルを3で踏んでください」
私の脳は3歳児レベルまで低下していたため、言われたことを遂行するロボットと化した。
「1・2の3ッ!」
ズポッ! という気持ちの良い音ともに、私の車はぬかるみから抜け出し、前進することに成功。
何食わぬ顔でMi0が助手席に戻ってきた。
「さあ、ラスト1件終わらせて帰りましょう」
そう言って、彼は笑った。
車がぬかるみにはまり脱出【他力本願編】
Mi0(ミオ)の話をもとに、私、Fuku2(フクツ)が書いています。
三人称一元視点です。(Mi0の視点で、第3者が話を進めていく書き方)
効率は時に非効率を生む
Mi0(ミオ)は、効率主義者だ。
それも、病的と言っていいほどに。
Yahoo! mapで、配達先をリストアップし、常に最短ルートを模索し続ける姿勢からも、極度の効率厨だとわかっていただけると思う。
そのため、彼は道をいとわない。
さすがに車で入っていけない道は通らないが、多少狭かろうと、アスファルトで舗装されてなかろうと、お構いなしだ。
彼は、常に最短のルートを選択する。
すべては愛する家族のため。
宅配という長時間労働になりがちな仕事であろうと、家族サービスをする時間を作るため、常に彼は最高効率を目指すのだ。
お小遣い制なのに。
しかし、そんな彼だからこそ、悲劇に巻き込まれることになる。
舗装されていない道は危ない
Mi0(ミオ)の担当するエリアは、田舎だ。
都会に住んでいる人には想像しづらいかもしれないが、田舎には舗装されていない道が多い。
それこそ、轍があるから、かろうじて道だと判別できるような道だってある。
ある雨の日、Mi0は、いつも通り最短ルートを通った。
そのルートは、舗装されていないが、彼にとって使い慣れている道。
何の問題もない、とでも思ったのだろう。
いつも通り突き進んだ結果、彼は最高効率でぬかるみに嵌まった。
ぬかるみに深くはまると、何をしてもダメ
彼は焦った。
同乗者がいれば、押して脱出という道もあったかもしれないが、その時、彼は一人だったからだ。
――助けはない。
フロッピーディスク程度の容量しかない頭をフル回転させ、彼はバックするという手段に出た。
“押してダメなら引いてみよう”から、発想を得たのかもしれない。
ブオーン。
しかし、結果は無情だった。
エンジンから、おっさんの鳴き声みたいな音が響き渡るだけで、ぬかるみからは一向に抜け出せない。
前進と後退を交互に繰り返し、何とか抜け出そうとあがいた結果、より深くぬかるみにはまってしまい、彼の戦いは終焉を迎えた。
「そうだ、JAF呼ぼう」
某CMのような一文をつぶやき、彼はロードサービスに定評のあるJAFを呼ぶことに決めたのだった。
JAFは、年会費を払い、個人会員に登録しておくと安いのだが、単発で使うと割高だ。
そのため、かなり渋っていたようだが、背に腹は代えられないと、覚悟を決めたらしい。
後に彼は言う。
「その日の稼ぎより、JAF代の方が高かったですよ」
そう言って、彼は笑った。
――そして、彼はJAFの個人会員に入ったのであった。
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まとめ
車がぬかるみにはまり脱出した時の話を2つ紹介しました。
宅配ドライバーという職業柄、こういったアクシデントに遭遇しやすいので、経験者として助言しておきますが、“注意深く運転すること”と、“備え”はあった方が良いと思います。
備えというのは、JAFの個人会員のことですね。
単発の依頼より、断然安くなるので。
本記事で紹介した2つの話を反面教師にして、みなさんは車がぬかるみにはまらないよう、お気を付けください。
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